夕方、散歩をしているとどこからともなく猫ちゃんが現れた
その距離およそ10メートル
「ねこちゃーん」
そう話しかけると
「にゃーん。」
とかわいらしい声で返事をしてくれた
「おーーい」
「にゃーん」
走るたび
にゃにゃ
と鳴いてるのがめちゃくちゃかわいい
「どこいくのー!まってまって」
といいながら
猫ちゃんの方に駆け寄る
三毛っぽい模様の
美しい毛並みをしたきれいな猫ちゃんだった
首輪はしていない。
声を掛けながら近づいたから
逃げちゃうかなあと思っていたのだが
想定外、足元にすり寄ってきてくれた。
この子人間慣れしてるんだな
「可愛いねねこちゃん、かまってくれるの?」
とはなしかけるとまた、
「にゃーん」
と鳴くのである。
めちゃくちゃかわいい
猫って警戒心が強いから自分から近づいてくれること自体
とても珍しいのだが
なでても怒られなかったから
調子に乗ってかなりの時間撫でさせてもらっていた
「かわいいね、お散歩してるの?一緒だね」
「にゃーん」
「おなか空かない?私はおなかすいたよーごめんね何も持ってなくて」
「にゃ」
私の言葉が分かるとでもいっているかのように
かわいらしい声で反応してくれた
「にゃーんにゃーんにゃーん」
と言いながら私の手に頭を擦り付けてきたので
頭をなでると満足そうに眼を閉じてじっとしていた
大丈夫かな、と思いつつ
のど元をなでてみると
ごろごろごろ
とのどを鳴らしてくれた。
そんな様子を見ていると
じんわりと、心に温かいものが広がり
涙があふれだした
「あれ、つかれてるんかなあ。」
そうつぶやき
ぼんやりとした世界で猫ちゃんを見ていると
ふいっと顔を上げ、私の顔をじっと見てくるのだ
満月のようなとても美しい瞳をしていた
「なに泣いてるのよ、しっかりしなさい。」
まるでそう、勇気づけられているかのように感じた
そう、自分で傷心していることには気づいていた
しかしそれを癒す方法がなくてしかたなく
ぶらぶら当てもなく散歩していたら
このうつくしい猫ちゃんが現れたのだ。
「ごめんね、ありがとう。ありがとう。」と言いながら
しばらくその美しい毛並みを、
あたまを撫でさせてもらっていたら
心が穏やかになっていくのを感じた。
この猫ちゃんはわたしを助けに来てくれたのかもしれないな
そんな自分都合の解釈をして
いつか絶対に猫を飼おう、そして恩返しをしようと
心に誓ったのである。
きみにたくさんの幸せが訪れますようにと願いながら
猫ちゃんと共に、夕暮れ時を過ごした。